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ADAS(先進運転支援システム)とは|機能の種類とセンサー、整備工場の作業との関係

ADAS(先進運転支援システム)とは

運転者の操作を部分的に助ける装置の総称で、自動運転のレベル1と2に当たります。

ADAS(先進運転支援システム)とは、カメラやレーダーで車の周りを検知し、ブレーキ、ハンドル、アクセルの操作を部分的に助けたり、危険を運転者に知らせたりする装置の総称です。英語の Advanced Driver-Assistance Systems の略で、国土交通省は同じ考え方の技術を「先進安全自動車(ASV)」の名前で1991年度から推進してきました。衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープアシスト、アダプティブクルーズコントロール(ACC)が代表例です。ASV推進検討会の整理では、こうした装置を積んだ車は自動運転レベル1〜2の「運転支援車」で、運転操作の主体は運転者のままです。乗用車の衝突被害軽減ブレーキは、国産の新型車では2021年11月から装備が義務になっています。

このページは、特定整備の認証を持つ工場や、これから取る工場の方に向けて、ADASの機能の種類、使われるセンサー、入庫した車のどの作業で調整が要るかを整理したものです。センサーそのものの仕組みは「ADASのセンサーの種類と仕組み」、レベル3以上の自動運転は「自動運転のレベルとは」に分けて書いています。

メーカーごとに呼び名が違うことも、ADASが分かりにくい理由の一つです。同じ衝突被害軽減ブレーキでも、カタログにはメーカー独自の商品名が載ります。ASV推進検討会は装置ごとに「共通名称」と「通称名」を決めているので、お客さまへの説明や見積書では、商品名に共通名称を添えておくと話が通じやすくなります。

ADASの種類と主な機能

止まる、車線を保つ、車間を保つ、周りを知らせる、駐車を助ける、の5つに分けると整理しやすくなります。

国土交通省のASV推進検討会がまとめた「主要なASV技術の概要」(第7期)には、乗用車向けだけで30近い技術が並んでいます。整備工場の受付で出会うことの多いものを、共通名称と通称名で並べると次のとおりです。センサーの欄は、国の講習テキストとメーカーの取扱説明書で確認できた例で、車種によって構成は違います。

通称名ASVの共通名称働き検知に使うもの(例)
衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)衝突被害軽減制動制御装置前方の車両や歩行者との衝突を予測して警報し、避けられないと判断すると自動でブレーキを制御する前方カメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーザー
レーンキープアシスト車線維持支援制御装置走行車線を認識し、車線中央付近を保つための操作力を軽くする。逸脱しそうなときは警報する前方カメラ
車線逸脱警報車線逸脱警報装置車線から外れそう、または外れたときに警報する前方カメラ
全車速アダプティブクルーズコントロール(ACC)全車速域定速走行・車間距離制御装置設定した車速で走り、遅い先行車がいれば車間を保って追従する。先行車が止まれば停止を保持するレーダーやカメラなど先行車との距離を検出するセンサー
リアビークルモニタリングシステム後側方接近車両注意喚起装置車線変更のときに後側方から近づく車を知らせる後部バンパー内側のレーダー(車種による)
パーキングアシスト後退時駐車支援制御装置後退駐車のときに目標位置付近へハンドルを制御する車種により異なる(整備要領書で確認)
ペダル踏み間違い時加速抑制装置同左アクセルの踏み間違いが疑われ、障害物への衝突が予測されるとき、エンジン出力やブレーキの制御で急発進や急加速を抑える超音波センサーなど(マツダ CX-60 の取扱説明書では、AT誤発進抑制制御が前後の超音波センサーを利用)
レーンキープアシスト(車線維持支援制御装置)とは、前方カメラで走行車線を認識し、車線の中央付近を保って走るためのハンドル操作の力を軽くする装置です。ASV推進検討会の定義では、何らかの理由で車線から外れそうになったときに、運転者が車線中央へ戻す操作をするよう警報する機能も含みます。警報だけを出す「車線逸脱警報装置」とは別の装置で、こちらは保安基準第43条の6により乗車定員10人以上のバスと車両総重量3.5トンを超えるトラックに備えることが求められています。特定整備の制度では、レーンキープアシストは「自動命令型操舵機能」と呼ばれ、前方を監視するカメラなどの取り外しや調整が電子制御装置整備の対象になります。

ACCとレーンキープアシストを組み合わせて、車線を保ちながら前の車に付いて走る状態は、自動運転のレベル2に当たります。高速道路で手を添えるだけで走れる車でも、運転の主体は運転者です。この区別はユーザーへの説明でも誤解が多いところで、後の節で触れます。

ADASに使われるセンサー

カメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーザー(LiDAR)、超音波センサーが中心です。

ADASのセンサーとは、運転支援装置が周りの車両、歩行者、白線、障害物を見つけるための部品で、装置の「目」に当たります。国の電子制御装置整備の講習テキストは、衝突被害軽減ブレーキとレーンキープアシストの前方監視に使うものとして、単眼・複眼のカメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーザーを挙げています。カメラは主にフロントガラス上部、ミリ波レーダーは主にフロントグリルやバンパの裏側に付きます。ミリ波レーダーは30GHz〜300GHzの電波を使うので雨や霧に強く、カメラは物の種類を見分けられるといった具合に、それぞれ得意な場面が違います。どれも取付位置や向きがずれると正しく検知できなくなるため、交換や脱着のあとに調整が要ります。

国土交通省の「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」テキストは、先進安全技術に用いられるセンサーとして、フロントガラス上部の単眼カメラと複眼カメラ、フロントグリルやバンパの裏側のミリ波レーダー、フロントガラス上部の赤外線レーザーを挙げています。駐車支援や踏み間違いの抑制には、バンパーに埋め込まれた超音波センサーが使われる車が多く、トヨタやマツダの取扱説明書にもその記載があります。

  • カメラ:物が何であるかを見分けられ、白線や道路標識も読み取れる。逆光や悪天候の影響を受けやすい
  • ミリ波レーダー:雨、霧、雪の影響を受けにくく、距離と相対速度を測れる。物の種類は見分けられない
  • 赤外線レーザー:距離の精度は高いが、測れるのは数mから数十m程度。低速域で使う装置が多い
  • 超音波センサー:バンパー周辺の近くの障害物を検知する。細いものや音を吸う雪などは検知しにくい

1台に複数のセンサーを積み、互いの弱点を補う構成も増えています。どのセンサーが付いているかは、取付位置と合わせて整備要領書で確かめるのが確実です。センサーごとの仕組み、取付位置、交換や脱着のときの注意は「ADASのセンサーの種類と仕組み」にまとめました。

ADASの装備義務と保安基準

衝突被害軽減ブレーキは新車で義務化済みで、ほかの装置も順に加わっています。

ADASの装備義務とは、道路運送車両の保安基準で、一部の運転支援装置を新しく作る車に備えるよう求めるルールです。乗用車と車両総重量3.5トン以下の貨物車の衝突被害軽減ブレーキは、2020年1月31日の告示改正で義務付けが決まり、国産の新型車は2021年11月、継続生産車は2025年12月から適用されています(輸入車は2024年7月と2026年7月、軽トラックの継続生産車は2027年9月)。オートマチック乗用車のペダル踏み間違い時加速抑制装置も、2025年6月17日の改正で新型車は2028年9月1日からの義務付けが決まりました。いずれも新車が対象です。

大型のバスやトラックでは、衝突被害軽減ブレーキに加え、車線逸脱警報装置(保安基準第43条の6)や、左側面への自転車の巻き込みを知らせる側方衝突警報装置(第43条の9)の基準もあります。乗用車と大型車で対象の装置が違うため、商用車を多く扱う工場では、車両総重量で区分を確かめておくと受付が早くなります。

義務化の時期の詳しい表、サポカーとサポカーSの区分、車検での扱いは「衝突被害軽減ブレーキの義務化はいつから」で解説しています。OBD検査では衝突被害軽減ブレーキや自動運行装置などが対象装置になっており、手順は「OBD検査の実務」にあります。

ADAS車の整備とエーミング、特定整備の関係

センサーそのものに触れなくても、バンパーやガラスの交換で調整が要る場合があります。

ADAS車の整備で特定整備に当たるのは、衝突被害軽減ブレーキとレーンキープアシストに使う前方監視用のカメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーザー等の取り外しや機能調整(ECUの調整を含む)と、それらが付いたバンパ、グリル、窓ガラスの脱着、そして自動運行装置の整備です。2020年4月1日施行の改正道路運送車両法で「電子制御装置整備」として加わり、事業として行うには地方運輸局長の認証が要ります。国の講習テキストは、センサーが付いたバンパやフロントガラスを交換したときは、不具合が出ていなくても調整を行うとしています。ターゲットを置いて調整する静的エーミングは対象で、走行で調整する動的エーミングだけの作業は対象外です。

受付の段階で、次の順に確かめておくと、作業の途中で「この車は調整が要った」と気付く事態を防げます。

  1. 装備を確かめる:車検証の型式とグレード、フロントガラス上部のカメラ、グリルのエンブレム周辺やバンパー内のレーダーの有無を見ます。
  2. 作業との重なりを見る:フロントガラス交換、バンパーやグリルの脱着、前面の板金、アライメント調整など、センサーの向きに関わる作業が入っているか確かめます。
  3. 整備要領書を入手する:調整の要否と方法(静的、動的、両方)は車種で違うため、FAINESやメーカー、ディーラーから整備要領書を取り寄せます。
  4. 車両の状態を整える:講習テキストは、四輪アライメントやボディアライメントに不具合がない状態を調整の前提としています。
  5. 認証の範囲を確かめる:電子制御装置整備の認証がない工場は、該当する作業を引き受けられません。外注先を決めておきます。

該当する作業の一覧は「特定整備に該当する作業一覧」、調整そのものの手順は「エーミングとは」、必要なターゲットは「エーミングのターゲット」、整備要領書の取り寄せ方は「FAINESの使い方」で確認できます。調整をしなかったときに起こりうることは「エーミングをしないとどうなる?」に書いています。

ADASをお客さまに説明するときの注意

運転支援であって自動運転ではないこと、作動しない場面があることを伝えます。

国土交通省は、衝突被害軽減ブレーキは完全に事故を防ぐものではなく、作動条件は車種ごとに取扱説明書に書かれている、と注意を呼びかけています。周囲の環境によっては障害物を正しく認識できない場合や、衝突の可能性が高くない場面で作動してしまう場合(不要作動)があることも示しています。ASV推進検討会も、レベル2までの車は「運転支援車」であり、自動運転車と呼ばないよう整理しています。

納車のときに伝えておきたいのは、次の3点です。フロントガラスのカメラの前にステッカーを貼らないこと、グリルやバンパーを擦ったら見た目に傷がなくても点検を受けること、警告灯が点いたら機能が止まっている可能性があること。トヨタやホンダの取扱説明書にも、レーダー周辺への衝撃やステッカーについて同じ趣旨の注意が載っています。

修理の見積もりでは、エーミングの費用が別に出る理由を説明できるよう準備しておくと話が早く進みます。「ガラスを替えるとカメラの向きがわずかに変わるため、メーカーの手順でカメラの向きを合わせ直す作業が要る」と、部品と作業を分けて書くと伝わりやすくなります。

ADASに関するよくある質問

ADASと自動運転は同じものですか。

違います。ASV推進検討会の整理では、ADASのように運転操作の一部を自動化する技術を積んだ車はレベル1〜2の「運転支援車」で、運転の主体は運転者です。システムが運転操作の全部を代わるレベル3以上を「自動運転車」と呼びます。

ADASの種類はいくつありますか。

決まった数はありません。国土交通省のASV推進検討会がまとめた「主要なASV技術の概要」では、乗用車向けだけでも衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープアシスト、全車速ACC、後側方接近車両注意喚起装置など30近い技術が共通名称つきで並んでいます。

フロントガラスを交換したら必ずエーミングが要りますか。

前方カメラが付いたガラスなら、講習テキストは交換後に調整を行うとしています。方法が静的か動的かは車種で違い、静的エーミングを伴う作業は特定整備に当たります。カメラのないガラスの脱着は該当しません。

レーンキープアシストが効かないと言われたら、何を確かめますか。

まず警告灯とスキャンツールで故障コードを確かめ、フロントガラスのカメラ前の汚れ、曇り、ステッカーを見ます。講習テキストは、装置はすべての状況で作動するものではないので、性能の限界か不具合かを判断してから故障探求をするよう求めています。作動条件は車種ごとに取扱説明書に書かれているので、お客さまが使った場面と照らし合わせます。

ADAS車の整備履歴を車ごとに残すには、どうすればよいですか。

エーミングの実施日やガラス交換の履歴を1台ごとに残せる自動車整備システム(自動車整備ソフト)を使うと、次の入庫で調整の要否を判断しやすくなります。日本カーネットの整備システム・整備ソフト DREAM POWER は車両販売システムの機能もあり、車販ソフトを別に持たずに顧客と車両の情報をまとめられます。国内40社を並べた整備システム 比較表を無料でお送りしており、整備ソフト おすすめの選び方や、整備ソフト 安い導入、整備システム リースなしでの契約のご相談も受け付けています。

出典・関連ページ

このページは次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月17日確認)。

ADASのセンサーの種類と仕組みカメラ、ミリ波レーダー、LiDAR、超音波
自動運転のレベルとはレベル0〜5と自動運行装置の整備
衝突被害軽減ブレーキの義務化対象車の時期とサポカーの区分
エーミングとは車のカメラ・レーダーの校正と必要な作業
特定整備に該当する作業一覧分解整備7項目と電子制御装置整備
特定整備の認証の取り方要件・必要書類・申請の流れ

※本ページは国の資料とメーカーの公開資料を整理したものです。装置の作動条件や調整の方法は車種ごとに違うため、作業の前に整備要領書と取扱説明書で確認してください。

EV / ADAS

EV・ADAS整備ガイド

エーミング、高電圧整備、ADASの整備を、制度と作業の両面からまとめています。