訪問特定整備とは|出張エーミングの要件と工場が準備すること
訪問特定整備とは
2025年6月30日に始まった、認証工場が事業場の外で特定整備を行うための制度です。
それまで特定整備は、認証工場が自分の事業場内で行う必要がありました。国土交通省は、自宅でエンジンがかからない車を整備士が訪問して直す場合や、人手不足で自社工場を維持できなくなった運送事業者に認証工場から整備士を派遣する場合を、制度を使う例として挙げています。
エーミングの依頼で「お客さまの所まで来てほしい」と言われたとき、この制度で受けられるかどうかは、作業場所と作業の種類で決まります。このページでは、2つの種類の違い、電子制御装置整備を事業場外で行う場所の要件、届出と人の要件、守ること、引き受ける前の確認点を、国土交通省の告示・通達・Q&Aに沿って整理します。
訪問特定整備と限定訪問特定整備の違い
エーミングを含む電子制御装置整備を行えるのは、訪問特定整備(フルパッケージ)だけです。
| 項目 | 訪問特定整備(フルパッケージ) | 限定訪問特定整備 |
|---|---|---|
| 作業場所 | 施行規則第57条第1号から第5号の基準を満たす設備がある場所です。 | 安全性の確保と環境保全を図れる場所です(床が平滑、車両の周りに50cm以上など)。 |
| できる作業 | 自社の認証の範囲の分解整備と電子制御装置整備です。 | 事故・故障で摩耗・損傷したブレーキパッドの交換、オルタネータやスターターモーター交換に伴う部品の取り外しなど、告示で決められた作業だけです。 |
| 期間 | 作業開始日を含む連続3日以内です(離島は5日以内)。 | 実施規程に期間の定めはありません。 |
| 法定点検整備 | 特定整備を伴う法定点検整備も行えます。 | 行えません。 |
| 車検・指定整備 | 行えません。 | 行えません。 |
| OBD確認 | 行えません。 | 行えません。 |
表は実施規程第2条、通達「自動車整備事業の取扱い及び指導要領について」の別添6、国土交通省の「訪問特定整備等に係るQ&A」の問5・問6・問17・問18によります。限定訪問特定整備の作業一覧に電子制御装置整備は入っていません。そのため、前方カメラやレーダーのエーミングを事業場の外で行えるのは、訪問特定整備(フルパッケージ)の要件を満たす場所に限られます。
OBD確認は、自ら認証を受けた事業場の敷地内で行うと決められているため、どちらの訪問特定整備でも行えません。OBD確認の流れは「OBD検査の実務」で解説しています。
出張エーミング(訪問先での電子制御装置整備)の場所の要件
訪問先が、自社の事業場と同じ設備基準を満たしていることが条件です。
- 自社の事業場の中にある洗車場や駐車場は、土地・建物が賃貸であっても訪問特定整備の作業場所にできません(Q&A問16)。
- 作業場所は、自社が受けている認証の種類と同じ設備基準を満たす必要があります。たとえば分解整備のみの事業場の設備基準を満たす場所では、電子制御装置整備は行えません(Q&A問24)。
- 訪問先にある設備や機器を使ってもかまいませんが、その性能に問題がないことは自社の責任で確かめます(Q&A問10)。
- 作業場所が要件を満たすかどうかは、届出の前に事業者が自らの責任で判断し、作業を始める前には訪問特定整備等管理者が毎回確かめます(Q&A問8)。
エーミングの作業環境やターゲットの条件は、事業場で行う場合と同じく、メーカーの整備要領書に従います。訪問先で整備要領書の求める広さや明るさを確保できるかどうかは、事前に現地を見て判断してください。ターゲットの扱いは「エーミングのターゲットとは」、整備要領書の入手先は「FAINES(ファイネス)とは」にまとめています。
訪問特定整備の届出と、従事できる人の要件
届出は事業場ごとに、開始日の前日までに運輸支局長あてに電子メールで行います。
| 役割 | 要件(実施規程第4条・第5条) |
|---|---|
| 訪問特定整備等管理者 | 事業場の整備主任者のうち少なくとも1人で、訪問特定整備等教育を受けた人です。他の事業場の管理者を兼ねられません。 |
| 訪問特定整備士 | 一級または二級の自動車整備士で、特定整備の実務経験が3年以上あり、教育を受け、届け出られた人です。 |
| 準訪問特定整備士 | 三級の自動車整備士で、同じく実務経験3年以上・教育・届出の要件を満たす人です。訪問特定整備士の同行指示の下か、管理者が高度な管理手法で統括する場合に限り従事できます。 |
| 訪問車体・電気装置整備士 | 自動車車体整備士か自動車電気装置整備士で、実務経験3年以上・教育・届出の要件を満たす人です。従事できるのは電子制御装置整備の訪問特定整備に限られます。 |
訪問特定整備等教育は、新たに届け出る人と、最後に教育を受けてから2年を過ぎた人に行い、内容と方法の記録を2年間保存します。自動車整備振興会の教育・指導を受けさせた場合は、事業者が教育を行ったものとみなされます。届出を振興会に代理してもらう方法は認められていませんが、届出メールのCCに振興会のアドレスを入れることが推奨されています(Q&A問28)。届出に対して受理の返信はなく、閉庁日でも届出はできます。届出窓口の一覧は国土交通省のページで公開されています。
訪問特定整備で守ること(遵守事項)
事業場の待機体制、料金の公開、説明と記録の保存が主な遵守事項です。
- 事業場の体制を保つ:電子制御装置整備を行う場合、整備士が訪問している間も、事業場に特定整備に従事する従業員2人以上を待機させます。そのうち1人以上は一級(一級二輪を除く)か、講習を修了した整備士とし、有資格者は待機者の4分の1以上とします(通達別添6第4の1(2))。従業員2人の小さな事業場の特例もあります。
- 証票と料金を公開する:届出を示す証票を作業場所とウェブサイトに掲げ、作業工賃や旅費などの内訳を含む料金をウェブサイトに載せます。作業別の料金は、事業場で同じ作業をした場合を下回ってはいけません。
- 身分証を携帯する:訪問する整備士に身分を示す証票を持たせ、初回訪問時と求められたときに示します。スマートフォンなどの画面での提示でもかまいません。
- 作業前に説明する:必要な作業の内容と必要性、車の状態を説明し、工賃・部品・旅費などの内訳を含む概算見積りを電磁的記録で渡します。
- 作業後に説明する:行った作業、交換した部品、作業後の車の状態を説明し、請求額を記録した電磁的記録を渡します。
- 記録を2年間保存する:開始と完了の同意の記録、概算見積り、作業場所の画像、作業前後の車両の画像、交換部品の画像、請求書・領収書などの電磁的記録を保存します。
- 報告と第三者確認:違反やそのおそれ、重大な事故があればすぐ運輸支局長に報告します。体制については定期的に第三者の確認を受け、結果を報告します。
作業場所の画像は、場所の要件を全て満たしていることが分かるように撮ります。車両の画像には、作業する箇所だけでなく車両全体と登録番号も写します。第三者確認は、訪問特定整備を始めた日から1年を過ぎて2年を過ぎるまでの間に1回以上、その後も同じ間隔で受けます。管理者は、強風や大雨などの悪天候で危険が予想されるときや、依頼者が同意しないときは作業開始を指示してはいけません。
訪問特定整備の特定整備記録簿に書く事項
通常の記載事項に加えて、どこで誰が行ったかを書きます。
- 訪問特定整備か限定訪問特定整備のどちらを行ったかを書きます。
- 作業を行った場所の住所または所在地を書きます。
- 作業場所が他の事業場なら、その名称と認証番号を書きます。
- 作業を行った訪問特定整備士等の氏名を書きます。
通達別添6第4の10によると、記録簿に書く欄がない場合は、これらを書いた別の書面と一緒に保存すればよく、紙ならホチキスで留める、電子なら一つのPDFファイルにするといった例が示されています。記録簿の基本の書き方は「特定整備記録簿の書き方」、ほかの記録簿との違いは「特定整備記録簿と点検整備記録簿・指定整備記録簿の違い」をご覧ください。
出張エーミングを引き受ける前の確認点
依頼主、場所、期間、人員の4つを先に確かめると、違反を避けられます。
- 依頼主は誰か:自動車の使用者や所有者から直接受けた依頼かを確かめます。他の認証工場や指定工場がお客さまから受けた特定整備を、訪問特定整備として再委託として受けられません(通達別添6第2の1)。
- 場所は要件を満たすか:訪問先に電子制御装置点検整備作業場の規模、平滑な床、十分な天井の高さ、車両置場があるかを現地で確かめます。距離はおおむね1時間以内か同じ都道府県内です。
- 整備要領書の条件に合うか:その車のエーミングに整備要領書が求める広さ、明るさ、屋内の指定を、訪問先で満たせるかを確かめます。
- 期間に収まるか:訪問特定整備は届け出た連続3日以内です。部品待ちで延びそうなら、改めて届け出るか、車を事業場に入れるかを決めます。
- 機器と人員を手配できるか:ターゲット、水準器、スキャンツールを持参できるか、訪問中に事業場の待機人数を保てるかを確かめます。
ガラス交換の業者などが、依頼元の認証工場に出向いてその構内で作業する形は、訪問特定整備とは別の扱いです。国土交通省のFAQ問5は、電子制御装置整備の認証を受けた事業場の構内で、その工場の管理の下で作業する取り決めが書面で交わされていれば、ガラス交換を行う者が認証を受けていなくても作業できるとしています。この場合、特定整備記録簿は外注元の認証工場が書きます。エーミングそのものの判断は「エーミングとは」、訪問する整備士の資格は「エーミングに必要な資格と講習」で解説しています。
訪問特定整備に関するよくある質問
お客さまの自宅の駐車場でエーミングできますか。
限定訪問特定整備の対象作業に電子制御装置整備は含まれていません。訪問特定整備(フルパッケージ)として行うには、電子制御装置点検整備作業場や車両置場など、自社の事業場と同じ設備基準を満たす場所が必要です。一般の自宅の駐車場がこれを満たすことは少ないため、多くの場合は車を事業場に入れて作業します。
訪問特定整備で車検の整備はできますか。
できません。訪問特定整備(フルパッケージ)では特定整備を伴う法定点検整備は行えますが、車検と車検に伴う指定整備は行えません。限定訪問特定整備では法定点検整備も行えません(Q&A問5・問6)。
整備士が個人で訪問特定整備を行えますか。
行えません。訪問特定整備等を行えるのは、届出をした自動車特定整備事業者に所属する整備士だけです(Q&A問32)。
届出は振興会に代わりに出してもらえますか。
代理はできません。届出は事業者自身が運輸支局長などに電子メールで送ります。CCに自動車整備振興会のアドレスを入れることが推奨されています(Q&A問28)。
訪問作業の見積りや記録をシステムで管理できますか。
訪問特定整備では、概算見積り、請求、作業前後の画像などを電磁的記録で2年間保存します。見積りと請求、特定整備記録簿の作成は自動車整備システム(自動車整備ソフト)で行うと、訪問分と事業場分の記録を同じ台帳で追えます。整備システム・整備ソフト DREAM POWER は車両販売システムの機能も備えており、車販ソフトを分けずに顧客と車両の情報を管理できます。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの確かめ方、整備ソフト 安いものから探す場合、整備システム リースなしの条件で検討する場合も、日本カーネットにお問い合わせください。
出典・関連ページ
このページは次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月17日確認)。
- 国土交通省 報道発表「自動車の『訪問特定整備』制度を新設します」(令和7年3月31日):https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha09_hh_000336.html
- 国土交通省「訪問特定整備制度について」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr9_000033.html
- 国土交通省「道路運送車両法施行規則の一部を改正する省令」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001879712.pdf
- 国土交通省告示第255号「自動車特定整備事業者が事業場以外の場所において特定整備を行う場合の実施規程」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001879713.pdf
- 国土交通省「自動車整備事業の取扱い及び指導要領について(依命通達)」(別添6):https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001899927.pdf
- 国土交通省「訪問特定整備等に係るQ&A」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001879725.pdf
- 国土交通省「届出の記載例及び記載方法」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001896887.pdf
- 国土交通省「届出窓口一覧」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001896890.pdf
- 国土交通省「特定整備制度に関するよくある質問・問答」(問5):https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001388156.pdf
- 道路運送車両法施行規則 第57条・第62条の2の2(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800074
※本ページは国の告示・通達・Q&Aを整理したものです。個別の作業場所が要件を満たすかどうかは、事業者が自らの責任で判断することとされています。迷う場合は、届出先の運輸支局にご確認ください。
EV / ADAS
EV・ADAS整備ガイド
エーミング、高電圧整備、ADASの整備を、制度と作業の両面からまとめています。







