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電気自動車・ハイブリッド車の車検|整備工場が確認する点検項目と高電圧系の注意点

電気自動車・ハイブリッド車の車検で変わること

検査の流れはガソリン車と同じで、電気装置の基準と点検の中身が一部違います。

電気自動車(EV)やハイブリッド車の車検とは、ガソリン車と同じく継続検査で保安基準への適合を確かめる手続きで、検査の種類や有効期間、法定費用の項目は変わりません。違いは、道路運送車両の保安基準第17条の2第5項が電力で動く原動機を持つ自動車に高電圧からの乗車人員の保護を求めており、その中身が細目告示第177条第5項に定められている点です。橙色の高電圧配線、絶縁抵抗の監視機能、電池の取付け、テルテールなどが確認の対象になります。一方、自動車点検基準の定期点検の表には、EV・ハイブリッド車だけの項目は置かれていません。

このページは、EV・ハイブリッド車の車検を受ける整備工場の方に向けて、入庫から完成までに工場が確かめることを整理したものです。高電圧部品の構成や絶縁抵抗の考え方は「EV・ハイブリッド車の高電圧システムの仕組みと点検」、高電圧部に触れる前の遮断の手順は「サービスプラグとは」に分けて書いています。

電気自動車の車検について、お客さまから「エンジンがないから点検が少ないのか」と聞かれることがあります。点火装置や排気など内燃機関に関わる項目は対象の装置がありませんが、ブレーキ、かじ取り装置、走行装置、緩衝装置などの点検はガソリン車と同じように行います。車両の重さやタイヤの状態は、点検の手間を減らす理由にはなりません。

EV・ハイブリッド車の定期点検の項目

自動車点検基準の別表第6を、EVとハイブリッド車に当てはめて読みます。

点検箇所(別表第6)周期ハイブリッド車電気自動車
電気装置 点火装置(点火プラグの状態など)1年ごとエンジンがあるので行う点火装置がなく該当しない
電気装置 バッテリ ターミナル部の接続状態1年ごと補機バッテリーの端子を見る。駆動用電池の点検は整備要領書の方法による
電気装置 電気配線 接続部の緩み及び損傷2年ごと低電圧の配線に加え、見える範囲の高電圧配線とコネクタも見る
原動機 本体、潤滑装置、燃料装置、冷却装置1年ごと(燃料装置の燃料漏れは2年ごと)エンジンについて行う内燃機関の装置がなく該当しない
ばい煙、有害なガス等の発散防止装置2年ごとエンジンについて行う該当しない
その他 車載式故障診断装置の診断の結果1年ごとスキャンツールで故障コードを読み、整備が要るものを整備する

表は自動車点検基準(e-Gov法令検索)の別表第6「自家用乗用自動車等の定期点検基準」をもとに、EVとハイブリッド車の扱いを整理したものです。「該当しない」は、その装置を持たない車では点検する対象がない、という意味で書いています。日常点検の表(別表第2)にも「バッテリの液量」「原動機のかかり具合」などの項目があり、お客さまに日常点検を案内するときも、車の装置に合わせて説明します。

「車載式故障診断装置の診断の結果」は、原動機、制動装置、ABS、エアバッグ、衝突被害軽減制動制御装置、自動命令型操舵機能、自動運行装置の識別表示(警告灯)の点検で代えられます(別表第6の注④)。EV・ハイブリッド車では、これとは別に電池や高電圧系のテルテールも点灯していないか見ておきます。

保安基準で確認される電気装置の要件

細目告示第177条第5項のうち、受入点検で目に見えて確かめられるものを並べます。

EV・ハイブリッド車の電気装置の保安基準とは、保安基準第17条の2第5項と、それを受けた細目告示第177条第5項(使用過程車)の要件です。作動電圧が直流60V又は交流30Vを超える動力系について、活電部を覆う絶縁体やバリヤ、エンクロージャに機能を損なう緩みや損傷がないこと、高電圧配線が橙色の被覆で識別できること、絶縁抵抗の監視機能を持つ車ではそれが正常に作動し警報が出ていないこと、駆動用電池が確実に取り付けられていること、走行可能な状態を運転者に表示する装置があることなどが定められています。2025年9月26日時点の告示には、電池が熱連鎖を起こしたときの警告と、煙を客室に出さない構造の要件も入っています。
  • エンジンルームと車両下面で、橙色の配線、コネクタ、ケースに損傷、緩み、こすれた跡がないか
  • メーターに、電池や充電系の故障を示すテルテール、絶縁低下の警報が出ていないか
  • READYなど、走行できる状態を示す表示が正しく点くか
  • 駆動用電池の取付けに緩みや損傷がないか(見える範囲で)
  • 充電インレットと周りの部品に損傷がないか

第17条の2では、電気装置の電波の影響、サイバーセキュリティ、プログラムの改変についても基準が置かれています(第2項から第4項)。使用過程車では、指定自動車などに備えられたものと同一の構造で同一の位置にあり、機能を損なう損傷がない電気装置は適合するものとされています。社外の電装品を後付けした車や、高電圧系の部品を交換した車は、純正と同じ構造か、取付け位置が変わっていないかも受付で聞いておきます。

車両接近通報装置の確認

モーターで静かに走る車には、歩行者に接近を知らせる装置が求められます。

保安基準第43条の7は、電力により作動する原動機を持つ自動車(二輪自動車などを除く)に、接近を歩行者等に知らせる車両接近通報装置を備えるよう定めています。走行中に内燃機関が常に作動する自動車は対象外です。使用過程車の基準は細目告示第223条の3にあり、走行時に確実に機能すること、作動を止める機能を持たないことが求められます。機能を損なうおそれのある損傷があるものは基準に適合しません。

同じ条文の第3項は、別添124「継続検査等に用いる車載式故障診断装置の技術基準」に適合しない車両接近通報装置を不適合とすると定めています。車両接近通報装置はOBD検査の対象装置の一つでもあるため、故障コードが残っている車は、音が出ていても検査で引っかかることがあります。受入点検で低速で動かしたときに音が出るかを確かめ、スキャンツールの結果とあわせて判断してください。

OBD検査とEV・ハイブリッド車

対象車の見分け方や検査の流れは、OBD検査の実務のページにまとめています。

2024年10月から始まったOBD検査は、エンジン車かEVかで仕組みが変わるものではありません。対象は車検証の備考欄に「OBD検査対象」と書かれた車で、国土交通省の対象装置一覧には車両接近通報装置(第43条の7)と排出ガス等発散防止装置(第31条)が含まれています。ハイブリッド車は両方、電気自動車は車両接近通報装置が関わる、と覚えておくと受付で迷いません。

対象車の見分け方、指定工場のOBD検査と認証工場のOBD確認の違い、不適合のときの進め方、記録簿への書き方は「OBD検査の実務」をご覧ください。不適合の原因が前方カメラやレーダーで、交換やエーミングが要る場合は電子制御装置整備に当たります。対象の車種は「エーミング対象車種一覧」で調べられます。

入庫時に確認すること(高電圧警告灯・充電口など)

預かる前の数分の確認で、作業の段取りと見積もりの精度が変わります。

  1. 車検証で車の種類を見る:燃料の種類の欄で、電気かハイブリッドかを確かめます。備考欄の「OBD検査対象」の記載もここで見ます。
  2. メーターの警告灯を見る:READYで起動し、電池や充電系、絶縁低下の警告、エンジンやブレーキの警告が出ていないか確かめます。点いていれば受付票に書き、お客さまと一緒に見ます。
  3. 充電口を見る:充電リッドの開閉、インレットの端子カバー、周りの割れや焦げ跡を確かめます。充電ケーブルがつながった状態では作業を始めません。
  4. 事故歴、水没歴を聞く:下回りをぶつけた、冠水路を走ったといった話は、駆動用電池やケースの損傷を疑う手がかりになります。
  5. 後付けの電装品を見る:社外のナビやドライブレコーダー、電源の取り出し方を確かめます。
  6. スマートキーの扱いを決める:預かったキーは決めた保管場所に置き、作業中に車の近くで不意に起動しないようにします。

補機バッテリーが上がっていると、ハイブリッド車も電気自動車もシステムが起動しません。長く乗っていなかった車は、入庫の段階で補機バッテリーの状態も確かめておくと、検査ラインに入れる前の手戻りを防げます。高電圧部に触れる整備を伴う場合は、作業者が特別教育を受けていることが前提です。教育の科目と時間は姉妹サイトの「EV・HV整備の特別教育」、絶縁手袋などの検査は「絶縁用保護具の定期自主検査」にまとめています。

ハイブリッド車・電気自動車の車検費用の説明の仕方

法定費用と工場の料金を分けて、根拠になる公表先を示します。

EV・ハイブリッド車の車検費用は、ガソリン車と同じく、国に納める法定費用(自動車重量税、自賠責保険料、検査手数料)と、工場が決める点検整備料金や代行料に分かれます。違いが出やすいのは自動車重量税で、エコカー減税の対象かどうかは車と受検の時期で変わります。国土交通省は2026年5月1日からの税額をフローチャートと税額表で公表しており、見積もりの前にその車の区分を確かめます。自賠責保険は、損害保険料率算出機構が2026年4月30日に基準料率の引上げを届け出ており、新しい料率は2026年11月1日以降に保険期間が始まる契約に適用されます。
費用決める所説明するときの確認先
自動車重量税国(税額は車両重量、経過年数、エコカー減税の区分で決まる)国土交通省「自動車重量税額について」の税額表とフローチャート
自賠責保険料保険会社(基準料率は損害保険料率算出機構が届け出る)損害保険料率算出機構「自賠責保険基準料率」
検査手数料国(2026年4月1日に改定)国土交通省「自動車の登録・検査の法定手数料変更について」
点検整備料金、代行料各工場自社の料金表と見積書

お客さまには、法定費用は国や保険の基準料率で決まる額で(検査手数料は指定工場か持込か、窓口かOSSかで変わります)、工場ごとに差が出るのは点検整備料金と、点検で見つかった整備の分だと伝えると話が早く進みます。電気自動車は「エンジンオイルの交換がない」「点火プラグがない」ぶん部品代が少なく見えることがありますが、ブレーキ液やタイヤ、補機バッテリーは同じように交換の対象です。駆動用バッテリーの交換は車検の項目ではないので、警告や劣化の相談があれば車検とは別の見積もりで扱います。税額や保険料の具体的な数字は改定があるため、このページには載せていません。

電気自動車・ハイブリッド車の車検に関するよくある質問

電気自動車の車検で、ガソリン車と違う点検項目はありますか。

自動車点検基準の定期点検の表に、電気自動車だけの項目はありません。点火装置や原動機など内燃機関の項目は該当する装置がなく、ほかはガソリン車と同じです。検査では保安基準第17条の2第5項の高電圧の保護の要件(細目告示第177条第5項)が確認の対象になります。

ハイブリッド車の車検で高電圧部に触れる作業はありますか。

通常の点検は外から見る範囲が中心です。高電圧部品の交換や、高電圧部に近い作業が必要になった場合は、特別教育を受けた作業者が、整備要領書に従ってサービスプラグの取り外しなどの遮断をしてから行います。

絶縁低下の警告灯が点いた車は車検に通りますか。

通りません。細目告示第177条第5項第4号は、絶縁抵抗の監視機能を持つ車について、機能が正常に作動し、警報が出ていないことを求めています。原因を整備してから検査を受けます。

ハイブリッド車の車検費用はガソリン車より安いですか。

法定費用の項目は同じです。自動車重量税はエコカー減税の区分で変わるため、その車の区分を国土交通省の税額表で確かめてから見積もりを出します。工場の料金は各工場が決めます。

EV・ハイブリッド車の車検予約と点検記録をまとめて管理できますか。

車検の満了日と点検の履歴を1台ごとに管理できる自動車整備システム(自動車整備ソフト)を使うと、EV・ハイブリッド車の入庫を受付の段階で見分け、前回の警告灯の記録も確かめられます。整備システム・整備ソフト DREAM POWER は電子車検証の情報を取り込め、車両販売システムの機能もあるので車販ソフトと顧客情報を二重に持たずに済みます。国内40社の整備システム 比較表を無料でお送りしており、整備ソフト おすすめの選び方、整備ソフト 安い導入、整備システム リースなしの契約形態もご相談いただけます。

出典・関連ページ

このページは次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月17日確認)。

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高電圧システムの仕組みと点検駆動用バッテリー・インバーター・高電圧配線
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※本ページは国の資料を整理したものです。税額、保険料、手数料は改定されることがあるため、見積もりの前に各公表先の最新の情報をご確認ください。

EV / ADAS

EV・ADAS整備ガイド

エーミング、高電圧整備、ADASの整備を、制度と作業の両面からまとめています。