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EV・ハイブリッド車の高電圧システムの仕組みと点検|駆動用バッテリー・インバーター・高電圧配線

EV・ハイブリッド車の高電圧システムとは

保安基準の細目告示は、直流60V・交流30Vを超える電気回路を区別して扱っています。

高電圧システムとは、電気自動車やハイブリッド車で、駆動用の電力を蓄え、変換し、モーターに送る電気回路のまとまりです。道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第177条(使用過程車の電気装置)は、作動電圧が直流60V又は交流30V(実効値)を超える部分を持つ「動力系」を、原動機用蓄電池、駆動用電動機の電子制御装置、DC/DCコンバータ等電力を制御又は変換できる装置、駆動用電動機とそれに付随するワイヤハーネス・コネクタ、走行に係る補助装置(ヒータ、デフロスタ又はパワ・ステアリング等)を含む電気回路と定めています。12Vの補機系とは、絶縁の扱いも点検の目のつけ方も別に考えます。

トヨタのプリウス プラグインハイブリッド(2009年12月から2011年12月の生産車)のレスキュー資料には、駆動用電池が345.6Vのリチウムイオン電池で、パワーコントロールユニットがこれを最大650Vに昇圧して3相交流に変換すると書かれています。数値は車種と世代で変わるので、作業する車の値は整備要領書で確かめてください。

なお、労働安全衛生規則では直流750ボルト以下が「低圧」、それを超えると「高圧」です。車の「高電圧」は自動車側の呼び方で、整備士の特別教育の対象は「対地電圧が50ボルトを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備の業務」と定められています。2024年10月1日施行の改正で低圧の限定が外れ、直流750ボルトを超える電池の車も対象に入りました。保安基準の60V、安全衛生の50Vと、基準ごとに線の引き方が違う点は覚えておくと混乱しません。

高電圧システムの構成部品と役割

駆動用電池からモーターまで、電気の流れに沿って部品を並べます。

部品役割プリウス プラグインハイブリッドの例(2009年12月から2011年12月生産車)
駆動用電池(HVバッテリー、駆動用バッテリー)走行用の電力を蓄える3.6Vのセルを直並列につないだ345.6Vの密閉型リチウムイオン電池。ラゲージルーム内リヤシート後部
サービスプラグ整備時に高電圧回路を手で遮断する駆動用電池の後部に3個
パワーコントロールユニット(インバーター、コンバーター)直流を昇圧して3相交流に変えモーターへ送る。発電や回生の交流を直流に戻して電池を充電するエンジンルーム。最大650Vに昇圧
モーター、ジェネレーター車輪を駆動する。発電して電池を充電するどちらも3相高電圧交流で、トランスミッション内
高電圧ケーブル高電圧部品どうしをつなぐオレンジ色。車両下部とエンジンルーム
エアコンコンプレッサー高電圧で動く電動コンプレッサーインバーター内蔵の3相交流モーター
駆動用電池充電器、充電インレット外部電源の交流を直流に変えて充電する充電器は運転席下部、インレットは左フロントフェンダー
補機バッテリー12Vの低電圧機器に電力を送るラゲージルーム

表の右の列は、トヨタ「レスキュー時の取り扱い プリウス プラグインハイブリッド」の「高電圧系部品と配線の位置」によります。DC/DCコンバータは、保安基準の細目告示が動力系の部品として名前を挙げている装置で、一般には駆動用電池の高い電圧を下げて12V系に電力を送り、補機バッテリーを充電する役目を持ちます。プリウス プラグインハイブリッドの資料ではパワーコントロールユニットが「インバーター/コンバーター」と書かれており、部品の分け方や搭載位置は車種で違います。

ハイブリッド車のインバーターの仕組み

電池の直流と、モーターの交流をつなぐ変換装置です。

インバーターとは、駆動用電池の直流電力をモーターが使う交流電力に変える装置で、ハイブリッド車では発電機(ジェネレーター)や回生ブレーキで生まれた交流を直流に戻して電池に充電する役目も持ちます。トヨタのプリウス プラグインハイブリッドでは、パワーコントロールユニットが駆動用電池の345.6Vを最大650Vに昇圧してから3相交流に変換し、モーターを動かしています。昇圧するのはコンバーター、直流と交流を変換するのはインバーターの役目です。インバーターの中にはコンデンサーがあり、システムを止めた直後も電荷が残るため、サービスプラグを抜いたあとに待機時間がとられています。

厚生労働省の特別教育の検討会報告書(2019年4月)も、電気自動車等の内部のコンバータやインバータは変電する装置であり、基礎的な知識が必要だとして学科に含めるべきだとしました。2019年の報告書の時点で、一般の工場の配電設備や変電設備が学科から外されたのと対照的で、整備士が理解しておくべきなのは車に載った変換装置の側だと整理されています。いまの学科では「電気装置に関する基礎知識」がこの部分に当たります。

インバーターやコンバーターの故障は、警告灯とスキャンツールの故障コードで見つかるのがふつうです。ケースの中は高電圧の部品が並び、冷却や絶縁の構造も車種ごとに違うため、分解の可否と交換の単位は整備要領書で決まります。整備工場で行うのは、故障コードの確認、配線とコネクタの点検、メーカーの指示に沿った部品交換までと考えておくと判断を誤りにくくなります。

高電圧部の見分け方(オレンジ色の配線と警告表示)

配線の色と、バリヤ・エンクロージャの警告表示が保安基準で決まっています。

  • 高電圧回路に使う動力系の活電部の配線は、橙色の被覆で他の電気配線と区別できること(細目告示第177条第5項第3号)。エンクロージャ(ケース)の中の配線は除かれます
  • 動力系の活電部を保護するバリヤとエンクロージャには、協定規則第100号の規則5.1.1.4.又は協定規則第136号の規則5.1.1.5.に定める様式の例による警告表示があること(同項第2号)
  • ただし、工具で他の部品を外さないと触れない場所や、日常の使用では触れない車両下面にあるもの、二重以上の保護がされているものは、警告表示の対象から除かれます

メーカー資料でも同じ区別が使われています。トヨタのGS450h・GS300hのHVバッテリー回収マニュアルは、高電圧回路のケーブル類(オレンジ色)と高電圧に関わる部品(高電圧のコーションラベル貼り付け)に不用意に触らないよう注意しています。逆に言えば、カバーを外した奥の部品には警告表示がないこともある、ということです。ラベルが見えないから低電圧だと判断せず、配線図と整備要領書で高電圧部の範囲を確かめてください。

用語も押さえておきます。告示では、通常の使用時に通電する導電部を「活電部」、活電部を囲うものを「バリヤ」、機器を包むケースを「エンクロージャ」と呼び、配線の被覆やコネクタのカバー、絶縁目的の塗料などを「固体の絶縁体」と定義しています。

ハイブリッドバッテリーの点検と高電圧系の点検箇所

保安基準の要件を、目で見る点検項目に置き換えて確かめます。

点検箇所見ること細目告示第177条第5項
配線の被覆、コネクタのカバー、バリヤ、エンクロージャ機能を損なう緩みや損傷がない第1号
高電圧配線橙色の被覆で識別できる第3号
絶縁抵抗の監視機能正常に作動し、警報が出ていない第4号
短絡時に回路を切るヒューズ、サーキットブレーカ緩みや損傷がない第5号
バリヤやエンクロージャを電気的シャシにつなぐ電線、アース束線、ボルト締め締結に緩みや損傷がない第6号
充電系連結システム(充電インレットとその配線)活電部の保護に緩みや損傷がない第7号
走行可能状態の表示(READY表示など)表示する装置を備えている第10号
駆動用電池の取付け振動などで移動や損傷をしないよう確実に取り付けられている第11号
電池や充電系の故障などを知らせるテルテール故障、残量低下(EV)、熱連鎖のときに警告する第13号

ハイブリッドバッテリーそのものの点検は、外から見える範囲が中心になります。取付けの緩み、ケースの変形や液漏れの跡、周りの高電圧配線とコネクタの損傷、警告灯とスキャンツールで見る故障コードです。電池の状態を数値で見る項目(電圧、内部抵抗、冷却の状態など)は、メーカーの診断機と整備要領書に定められた方法で確かめます。

自動車点検基準の定期点検の表(自家用乗用車などは別表第6)には、EV・ハイブリッド車だけの項目は設けられていません。関わるのは電気装置の「バッテリ ターミナル部の接続状態」(1年ごと)と「電気配線 接続部の緩み及び損傷」(2年ごと)、それに「車載式故障診断装置の診断の結果」(1年ごと)です。車検に向けた点検の進め方は「電気自動車・ハイブリッド車の車検」にまとめています。

絶縁抵抗の考え方

活電部と車体のあいだが、どれだけ電気を通しにくいかを見る値です。

絶縁抵抗とは、高電圧の活電部と電気的シャシ(電位の基準とする車体側の導電部の集まり)とのあいだの電気抵抗のことで、値が下がるほど漏電と感電のおそれが大きくなります。保安基準の細目告示第177条第5項第4号は、活電部と電気的シャシとの間の絶縁抵抗を監視し、作動電圧1V当たり100Ωに低下する前に運転者へ警報する機能を備える自動車について、その機能が正常に作動しており、警報が出ていないことを求めています。たとえば作動電圧が300Vの回路なら、1V当たり100Ωは30kΩに当たる計算です。警報の点灯は、車検でも作業前でも、絶縁の低下を疑う合図になります。

整備工場で絶縁抵抗を測る場合は、絶縁抵抗計(メガー)を使います。2024年の通達(基発0612第22号)も、特別教育で扱う検電器にサーキットテスターと絶縁抵抗計が含まれるとしています。ただ、測る電圧、測定箇所、サービスプラグや部品を外す条件は車種ごとに決まっており、整備要領書と違う手順で測ると、部品を傷めるおそれがあります。漏電の故障コードや警告が出ているときは、まず整備要領書の診断手順に沿って原因の範囲を絞り込みます。

2019年の検討会報告書の時点の整理では、漏電などの異常があると、車はコンピュータ制御で原則として電路をシャットダウンするとされています。お客さまから「急に走れなくなった」「READYが点かない」と相談された車は、高電圧系の絶縁の低下も原因の候補に入れて受け付けてください。

駆動用バッテリー交換と故障時の扱い

電池の分解修理はメーカーの領分です。工場は引き受けの条件を先に確かめます。

2019年の検討会報告書の時点では、駆動用電池に不具合があっても一般の整備工場では部品交換などの修理は行われず、部品交換やアッセンブリ交換を行うのはバッテリーメーカーの工場やメーカーから特別に指定を受けた整備工場で、従事する人はメーカーから専門の教育を受けている、と実態が書かれていました。駆動用バッテリーの交換を引き受けるかどうかは、メーカーやディーラーの取り扱い条件、部品の手配方法、必要な診断機を確かめてから決めてください。

  • 駆動用電池は、整備要領書に書かれた範囲を超えて分解しない(トヨタのHVバッテリー回収マニュアルは、記載以外の分解を禁じています)
  • 取り外した電池の端子部は、絶縁手袋を着けて絶縁テープで覆う
  • 取り外した電池は不必要に傾けず、上に物を置かず、雨水にぬれないよう車に積まれていた姿勢で保管する
  • 火に近づけたり加熱したりしない。重機などで本体を傷つける取り外し方をしない
  • 使用済みの電池は、メーカーの回収の仕組みに従って引き渡す

上の項目はトヨタのGS450h・GS300h(ニッケル水素電池)の回収マニュアルの記載をもとにしています。同マニュアルは、事故車や水没車では電池に変形、漏電、漏液が起きている可能性があるとして、感電と漏液に対する保護具を着けるよう求めています。衝突を受けたときの高電圧からの保護は保安基準第17条の2第6項でも別に定められており、事故車の高電圧系は、外から壊れていなくても内部の損傷を前提に扱います。

高電圧部に触れる作業の前の遮断と確認は「サービスプラグとは」に手順をまとめています。作業者の特別教育は姉妹サイトの「EV・HV整備の特別教育」、絶縁手袋などの検査は「絶縁用保護具の定期自主検査」をご覧ください。

高電圧システムに関するよくある質問

ハイブリッド車のどこからが高電圧ですか。

保安基準の細目告示は、作動電圧が直流60V又は交流30V(実効値)を超える部分を持つ動力系を対象に、絶縁や表示の要件を定めています。駆動用電池、インバーターやDC/DCコンバータ、駆動用モーターとその配線・コネクタ、電動のヒーターやパワーステアリングなどが含まれます。

オレンジ色の配線はすべて高電圧ですか。

高電圧回路の配線は橙色の被覆で識別することが保安基準で求められています。ただしエンクロージャ(ケース)の中の配線は対象外で、ケースの中にはオレンジ色でない高電圧配線もありえます。範囲は配線図と整備要領書で確かめます。

駆動用バッテリーの交換は一般の整備工場でもできますか。

車種とメーカーの取り扱い条件によります。2019年の検討会報告書の時点では、駆動用電池の部品交換やアッセンブリ交換はバッテリーメーカーの工場やメーカーから指定を受けた整備工場で行われている、と整理されていました。引き受ける前に、メーカーやディーラーに部品と作業の条件を確かめてください。

絶縁抵抗の警告が出た車は走らせてよいですか。

絶縁の低下を知らせる警報が出ている車は、細目告示第177条第5項第4号の基準を満たしません。漏電のおそれがあるので、整備要領書の診断手順で原因を特定してから扱ってください。

EV・ハイブリッド車の整備履歴をまとめて管理できますか。

車ごとの入庫履歴と故障コード、交換部品を記録できる自動車整備システム(自動車整備ソフト)があれば、駆動用バッテリーやインバーターの作業歴を次の入庫で確かめられます。整備システム・整備ソフト DREAM POWER は車両販売システムの機能も備え、車販ソフトと同じ顧客情報を使えます。国内40社の整備システム 比較表を無料でお送りしており、整備ソフト おすすめの選び方、整備ソフト 安い導入、整備システム リースなしの契約形態もご相談いただけます。

出典・関連ページ

このページは次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月17日確認)。

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※本ページは公開資料を整理したものです。部品の構成、電圧、点検の方法は車種ごとに違うため、作業はその車のメーカーの整備要領書に従ってください。

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