エーミングをしないとどうなる?ガラス交換・バンパー脱着後のリスクと法令
エーミングをしないと起きること
カメラやレーダーの向きがずれたまま、運転支援装置が作動するおそれがあります。
エーミングは、衝突被害軽減ブレーキや車線維持支援などに使うカメラ・ミリ波レーダー・レーザーレーダーの向きや位置を、メーカーの基準値に合わせ直す作業です。フロントガラスやバンパーを脱着すると、そこに付いているセンサーの取り付け角度がわずかに変わることがあります。エーミングを省くと、ずれた向きのままセンサーが前方を見続けることになります。
センサーの向きがずれると、車両が「正面にある」と判断する位置と実際の位置が合わなくなります。その結果、止まるべき場面でブレーキの作動が遅れる、隣の車線の車両に反応する、車線の認識がずれて警報が鳴らない・誤って鳴る、といった動きにつながるおそれがあります。どの症状が出るかは車種と装置によって異なり、外から見ただけでは気づけない点が厄介です。
計算例:取り付け角度が水平方向に1度ずれた場合の、検知方向のずれ(tan1°≒0.0175で計算)。図はずれを誇張して描いています。実際の影響は装置の種類や車両の制御によって異なります。
たとえば取り付け角度が水平方向に1度ずれただけでも、50m先では約0.87m、100m先では約1.75m、検知方向がずれる計算になります。100m先のずれ1.75mは、5ナンバーの小型乗用車の車幅の上限(1.7m)とほぼ同じ大きさです。数値はあくまで幾何学的な計算例ですが、「少しのずれ」が遠くでは車1台分になることがわかります。
エーミングが必要になる作業
センサーやセンサー付き部品を脱着・調整したときに必要になります。
道路運送車両法施行規則第3条第8号は、前方などを検知するセンサー、その情報を処理するコンピュータ(ECU)、センサーが取り付けられた車体前部や窓ガラスの取り外し・取付位置や角度の変更・機能調整のうち、自動命令型操舵や衝突被害軽減制動の作動に影響するおそれがあるものを電子制御装置整備と定めています。国土交通省の資料が挙げる代表的な作業は次のとおりです。
- 衝突被害軽減ブレーキや車線維持に使う前方カメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーザーの脱着や光軸調整
- カメラなどを交換したあと、ECUに接続を認識させるコーディング
- 前方カメラが付いたフロントガラスの脱着
- ミリ波レーダーなどが付いたバンパー・グリルの脱着
国土交通省の問答(問13)は、センサーが付いたガラスを脱着した後にはエーミングが必要としています。作業はメーカーが提供する型式固有の技術情報(整備要領書など)に従って行い、エーミングが適切に行われるよう措置を講じることが、認証工場の遵守事項として施行規則第62条の2の2に定められています。
自分の入庫車が対象車両かどうかは、エーミング対象車両の検索で車台番号から確認できます。
ガラス交換やバンパー脱着の見積もり前に、対象車両かどうかを確認しておきましょう。
エーミング対象車両を検索する検索の使い方を見る※検索画面はパソコンでの利用を前提にしています。スマートフォンでは入力欄が表示されないため、パソコンからご利用ください。
エーミングが必要ないケース・特定整備に当たらない作業
「必要ない」と言えるのは、センサーに影響しない作業や制度の対象外の車両に限られます。
国土交通省の資料では、次の作業や車両は電子制御装置整備(特定整備)に当たらないとされています。ただし、特定整備に当たらないことと、センサーの調整が要らないことは同じ意味ではありません。メーカーが作業後の確認や調整を求めている場合は、その指示に従います。
| ケース | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| センサーが付いていないガラス・バンパーの脱着 | 電子制御装置整備に当たらない | 問答 問2 |
| 運転支援装置が保安基準の適用を受けていない車両 | 類似の機能があっても対象外の車両がある | 問答 問3、制度概要 |
| 動的エーミング(走行して調整)のみの作業 | 特定整備の対象外 | 講習テキスト p.7 |
| 自動エーミング(車両が自動で補正)のみの作業 | 特定整備の対象外 | 講習テキスト p.7 |
| カメラ交換やコーディングを伴う動的エーミング | 特定整備の対象 | 講習テキスト p.7 |
ドアミラーに内蔵されたカメラや、後方・側方のセンサーについては、国の資料で該当・非該当を明示したものは確認できませんでした。こうした部品の作業は、メーカーの整備情報で調整の要否を確認したうえで判断してください。
エーミングをしないまま作業した場合の法令上の扱い
認証のない作業、認証範囲を超えた作業は罰則の対象です。認証工場には遵守事項があります。
電子制御装置整備は、地方運輸局長の認証を受けた事業場でなければ事業として行えません。2020年4月の制度施行時に設けられた経過措置は2024年3月31日で終わっており、現在は認証のない事業場が、対象車両のセンサー付きガラスの脱着やエーミングを行えません。
認証を受けずに自動車特定整備事業を経営した場合や、認証で限定された範囲を超えて作業した場合は、50万円以下の罰金の対象になります(道路運送車両法第109条第11号・第12号)。また認証工場は、メーカーの型式固有の情報に基づいて作業することと、エーミングが適切に行われるよう措置を講じることが遵守事項として定められています。遵守事項に違反すれば、運輸局による行政処分の対象になり得ます。
経過措置の内容と、これから認証を取る手順は経過措置期間のページで、認証工場が掲げる看板のルールは特定整備の看板(標識)で解説しています。
車検・OBD検査との関係
2024年10月に始まったOBD検査では、運転支援装置の故障コードも確認されます。
国土交通省は2024年10月1日から、車検で車載式故障診断装置(OBD)の情報を確認するOBD検査を始めました(輸入車は2025年10月1日から)。対象は2021年10月1日以降に型式指定を受けた新型車(輸入車は2022年10月1日以降)で、確認の対象には運転支援装置、自動運行装置、排出ガス抑制装置が含まれます。
エーミングが済んでいない、または作業が正しく完了していない状態で運転支援装置の故障コードが記録されている車両は、OBD検査で不合格になる可能性があります。ガラス交換や鈑金修理のあとに車検を控えている車両は、作業後にスキャンツールで故障コードを確認し、警告灯が消えていることと作動確認までを済ませてから引き渡してください。
2021年10月からは、定期点検の項目に「OBDの診断の結果」も加わっています。点検のたびに故障コードを確認する流れができていれば、エーミングの未完了にも早く気づけます。
ガラス店・協力工場に外注するときの確認点
外注しても、車両を引き渡す側が完了を確認する必要があります。
- 見積もりの段階で、車台番号から対象車両かどうかを確認する
- 外注先が電子制御装置整備の認証を受けているか、構内外注にする場合は書面で取り決めをしているかを確認する
- 作業後に、どの装置をどの方式(静的・動的)でエーミングしたか、故障コードの確認結果を受け取る
- 特定整備記録簿に記録し、お客様に作業内容とエーミングの実施を説明する
認証工場の構内でガラス業者が作業する構内外注は、書面で取り決めをすれば可能で、その場合の記録簿は外注元の認証工場が作成します(問答 問5)。記録の残し方は特定整備記録簿の書き方にまとめています。
エーミングをしないとどうなるかに関するよくある質問
フロントガラスを交換したら、必ずエーミングが必要ですか。
前方カメラなどのセンサーが付いたフロントガラスを脱着した場合は、エーミングが必要です(国土交通省「特定整備制度に関するよくある質問・問答」問13)。センサーが付いていないガラスの交換は電子制御装置整備に当たりません。
バンパーを外しただけでもエーミングは必要ですか。
ミリ波レーダーなどのセンサーが取り付けられたバンパーやグリルの脱着は、電子制御装置整備に該当します。センサーが付いていないバンパーの脱着は該当しません。作業前に、車両の装備とメーカーの整備要領書を確認してください。
エーミングをしないと車検に通りませんか。
2024年10月から始まったOBD検査では、運転支援装置などの故障コードが車載式故障診断装置に記録されていないかを確認します。対象は2021年10月以降の新型車(輸入車は2022年10月以降)です。エーミングが済んでいない状態で故障コードが記録されている車両は、検査で不合格になる可能性があります。
動的エーミングだけなら認証は要りませんか。
走行して調整する動的エーミングのみの作業や、車両が自動で補正する自動エーミングのみの作業は、特定整備の対象外とされています。ただし、カメラの交換やコーディングを伴う場合は対象になります。
ガラス店に交換を任せた場合、記録簿は誰が書きますか。
認証工場の構内でガラス業者が作業する構内外注は、書面で取り決めをすれば可能で、その場合の記録簿は外注元の認証工場が作成します(問答 問5)。外注した場合でも、エーミングが完了しているかを引き渡す側で確認してください。
エーミングの記録をきちんと残すには。
対象装置、実施した方式、整備要領書に基づいたこと、作業前後の故障コードの確認結果を特定整備記録簿に残します。件数が多い工場では、記録簿を作成・保存できる自動車整備システム(自動車整備ソフト)を使うと書き漏れを減らせます。整備システム 比較・整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかに加え、整備システム リースなしの導入可否、車両販売システムや車販ソフトと車両情報を共通にできるかも確認してください。
出典・関連ページ
このページは次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月3日確認)。
- 国土交通省「特定整備制度に関するよくある質問・問答」(問2・問3・問5・問13):https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001388156.pdf
- 国土交通省「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」テキスト:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001331469.pdf
- 国土交通省「特定整備制度概要」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001332203.pdf
- 道路運送車両法施行規則(第3条・第62条の2の2):https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800074
- 道路運送車両法(第109条):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- 国土交通省「OBD検査について」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_OBD.html
※本ページは制度と作業の概要を整理したものです。個々の車両の作業手順は、メーカーの整備情報に従ってください。