衝突被害軽減ブレーキの義務化はいつから|対象車、サポカーの区分と整備工場の注意点
衝突被害軽減ブレーキとは
いわゆる自動ブレーキで、保安基準では「衝突被害軽減制動制御装置」と呼びます。
このページは、整備工場の方に向けて、衝突被害軽減ブレーキの義務化の時期、サポカーの区分、仕組みと作動しにくい条件、整備や車検での扱いをまとめたものです。他の運転支援装置との関係は「ADAS(先進運転支援システム)とは」、前方のカメラやレーダーの仕組みは「ADASのセンサーの種類と仕組み」で説明しています。
衝突被害軽減ブレーキの義務化はいつから(乗用車)
国産の新型車は2021年11月、継続生産車は2025年12月からです。
| 区分 | 国産車 | 輸入車 |
|---|---|---|
| 新型車 | 2021年11月 | 2024年7月 |
| 継続生産車 | 2025年12月(軽トラックは2027年9月) | 2026年7月 |
「新型車」は義務化の日以降に新しく型式指定を受ける車、「継続生産車」はそれより前から作られている型式の車を指します。基準の試験では、静止した車には時速40km(軽トラックは30km)で、時速20kmで走る車には時速60km(同50km)で近づいて衝突しないこと、時速5kmで横断する6歳児相当のダミーには時速30km(同20km)で衝突しないことが求められます。
義務付けは新車が対象です。すでに使われている車に後から装置を付けるよう求めるものではありません。中古車の販売や車検のときに、お客さまから「この車は自動ブレーキが義務なのに付いていない」と聞かれたら、製造の時期と型式で判断することを伝えます。
トラック、バスの衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置
大型車は乗用車より先に義務化され、2025年9月からは対歩行者の要件も加わりました。
トラックやバスなどの大型車の衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)は、2013年に成立した国連規則第131号をふまえた義務付けなどで広く普及した、と国土交通省は説明しています。その国連規則が改正されたことを受けて、2023年1月4日に国内基準も改正され、時速10kmから最高速度までの範囲で、空車でも満載でも作動することや、横断する歩行者への試験が加わりました。適用は新型車が2025年9月、継続生産車が2028年9月です。
アクセルとブレーキの踏み間違いに備える「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」も、2025年6月17日の保安基準改正で、電気自動車を含むオートマチックの乗用車への搭載が義務付けられました。新型の乗用車は2028年9月1日(輸入車は2029年9月1日)からです。国土交通省の2025年11月の車両安全対策検討会の資料では、国連の協定規則第175号の改訂をふまえて対象車両を広げる改正が予定され、その適用時期は新型車2030年9月、継続生産車2032年9月とされていました。最終的な内容は改正の公布で確かめてください。
サポカーとサポカーSの区分(ワイド、ベーシック+、ベーシック)
搭載している装置の違いで分けた呼び名で、性能の評価ではありません。
| 区分 | 搭載する装置 |
|---|---|
| サポカー | 自動ブレーキ |
| サポカーS ワイド | 自動ブレーキ(対歩行者)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、車線逸脱警報(車線維持支援装置でも可)、先進ライト(自動切替型、自動防眩型または配光可変型の前照灯) |
| サポカーS ベーシック+ | 自動ブレーキ(対車両)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置 |
| サポカーS ベーシック | 低速自動ブレーキ(対車両、作動速度域が時速30km以下のもの)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置 |
ペダル踏み間違い時加速抑制装置の条件はマニュアル車を除きます。国土交通省の資料は、ロゴや愛称を使うときに「安全運転を支援する装置は万能ではなく、作動には一定の条件がある」旨を表示するよう求めています。2020年には、65歳以上の運転者を対象に、対象車種の購入や後付け装置の取り付けを補助するサポカー補助金も実施されました。中古車の店頭でサポカーと表示するときは、この表示の決まりを守ります。
衝突被害軽減ブレーキの仕組みと作動しにくい条件
前方のカメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーザーで検知し、ECUがブレーキを制御します。
作動しにくい条件は車種ごとに取扱説明書に書かれています。トヨタ MIRAI の取扱説明書(PCS)では、次のような例が挙げられています。
- 雨、霧、雪、砂嵐などの悪天候や、水や雪、土ぼこりの巻き上げがあるとき
- 逆光や、トンネルの出入口のように明るさが急に変わる場所
- 対象が急に近づく、自車の中心からずれている、壁や他の車のそばにあって一部が隠れているとき
- 前方センサーの向きのずれや、ホイールアライメントのずれがあるとき
- ブレーキが冷えていたり過熱していたりして、性能が落ちているとき
同じ取扱説明書には、道路脇のガードレールや電柱に近づいたとき、ETCゲートや洗車機の近くなどで不要に作動するおそれがあることも書かれています。国土交通省も、使う環境や条件が重なると、衝突の可能性が高くない場面で作動する(不要作動)ことがあるとしています。センサーの向きのずれやアライメントのずれは、整備工場が手を入れられる原因です。
衝突被害軽減ブレーキの整備と車検での扱い
前方センサーの作業は特定整備に当たり、車検ではOBD検査の対象装置です。
講習テキストの記載例では、衝突被害軽減ブレーキのカメラを交換してエーミングを行った場合、点検整備記録簿にはカメラの交換を「×」、エーミング作業を「A」と書き、特定整備に当たるものはチェック記号を○で囲むなどして記録します。記録簿の書き方は「特定整備記録簿の書き方」に、OBD検査の流れは「OBD検査の実務」にまとめています。
作業の範囲は「特定整備に該当する作業一覧」、調整の手順は「エーミングとは」、エーミングが要る車の探し方は「エーミング対象車種一覧」で確認できます。
衝突被害軽減ブレーキをお客さまに説明する手順
付いているか、何に効くか、何が苦手か、壊れたらどうなるかの順で伝えます。
- 装備を確かめる:車検証の型式やメーカーの装備表で、衝突被害軽減ブレーキの有無と、対車両か対歩行者かを確かめます。
- 名前を揃える:メーカーの商品名に「衝突被害軽減ブレーキ」の一般名を添えて説明します。
- 限界を伝える:国土交通省の表示例にならい、事故の防止や被害の軽減に役立つものの万能ではなく、条件によっては作動しないことを伝えます。
- 日常の注意を伝える:フロントガラスのカメラ前にステッカーを貼らないこと、グリルやバンパーを擦ったら点検を受けることを伝えます。
- 修理の費用を分けて示す:ガラスやバンパーの交換では、部品代とは別に調整の作業が要ることを見積書で分けて示します。
高齢のお客さまの乗り換え相談では、サポカーSの区分が話題になります。区分は装置の違いを示すもので、ワイドが一番安全という意味ではないことも、国土交通省の資料どおりに伝えます。
衝突被害軽減ブレーキに関するよくある質問
衝突被害軽減ブレーキの義務化で、今乗っている車にも取り付けが必要ですか。
必要ありません。国土交通省の改正は新車を対象とした義務付けで、国産の乗用車は新型車が2021年11月、継続生産車が2025年12月から対象です。それより前に作られた車に後付けを求めるものではありません。
軽トラックの衝突被害軽減ブレーキはいつから義務ですか。
乗用車と同じ基準の対象で、試験の速度に軽トラック向けの値があります。継続生産車の適用だけは2027年9月と、ほかの国産車(2025年12月)より遅く設定されています。
サポカーSワイドとベーシックでは、どちらが安全ですか。
区分は搭載している装置の違いによる分類で、性能を評価したものではありません。国土交通省は、サポカーSのほうが安全性能が優れているといった誤解を生じさせないよう求めています。
バンパーを交換したら、衝突被害軽減ブレーキの調整が要りますか。
前方のミリ波レーダーが付いたバンパーなら、交換後に調整が要ります。トヨタ MIRAI の取扱説明書は、フロントバンパーを交換したときはレーダーの再調整が必要としています。センサーが付いたバンパの脱着は特定整備に当たります。
衝突被害軽減ブレーキの点検や調整の履歴を残すには、どうしますか。
入庫ごとの作業を1台単位で記録できる自動車整備システムや自動車整備ソフトを使えば、調整した日と内容を次の車検で確かめられます。日本カーネットの整備システム・整備ソフト DREAM POWER は車両販売システムの機能を持ち、中古車の販売で使う車販ソフトと同じ顧客情報で管理できます。整備システム 比較用に40社をまとめた表を無料でお送りしており、整備ソフト おすすめの選び方、整備ソフト 安い導入、整備システム リースなしの契約形態もご相談いただけます。
出典・関連ページ
このページは次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月17日確認)。
- 国土交通省 報道発表「乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する国際基準を導入し、新車を対象とした義務付けを行います。」(令和2年1月31日):https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_003618.html
- 同 本文と別紙「乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する保安基準(概要)」:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001326168.pdf、https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001326170.pdf
- 国土交通省 報道発表「大型車の衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)の基準を強化します」:https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha10_hh_000277.html(別紙:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001579809.pdf)
- 国土交通省 報道発表「ペダル踏み間違い時加速抑制装置の搭載を義務づけます!」(令和7年6月17日):https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001894627.pdf
- 国土交通省 令和7年度第2回車両安全対策検討会「ペダル踏み間違い時加速抑制装置について(UN-R175関係)」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001969284.pdf
- 国土交通省「サポカー及びサポカーSの愛称及びキャンペーンロゴの使用上のお願い」:https://www.mlit.go.jp/common/001191061.pdf
- 経済産業省「『セーフティ・サポートカー(サポカー)』及び『セーフティ・サポートカーS(サポカーS)』の普及啓発ロゴが決定しました!」:https://www.meti.go.jp/press/2017/06/20170630011/20170630011.html
- 国土交通省 令和2年度第1回車両安全対策検討会「高齢運転者等の事故防止対策の推進(サポカーSの普及等)」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001844095.pdf
- 第7期ASV推進検討会「主要なASV技術の概要」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/data/asvtechnology.pdf
- 国土交通省「衝突被害軽減ブレーキは万能ではありません!」:https://renrakuda.mlit.go.jp/renrakuda/carsafety031.html
- 国土交通省「運転支援システムの特性や限界を知ってみよう!」:https://renrakuda.mlit.go.jp/renrakuda/carsafety045.html
- トヨタ自動車 MIRAI 取扱説明書(PCS):https://manual.toyota.jp/mirai/2212/fcev/ja_JP/contents/vhch05se050402.php
- トヨタ自動車 MIRAI 取扱説明書(Toyota Safety Sense のセンサー):https://manual.toyota.jp/mirai/2212/fcev/ja_JP/contents/vhch05se050401.php
- 国土交通省「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」テキスト:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001331469.pdf
- 国土交通省「OBD検査対象装置一覧」(令和7年6月17日時点):https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001898918.pdf
※本ページは国土交通省などの公表資料を整理したものです。保安基準の適用時期は改正されることがあるため、最新の告示と報道発表をご確認ください。
EV / ADAS
EV・ADAS整備ガイド
エーミング、高電圧整備、ADASの整備を、制度と作業の両面からまとめています。







