サービスプラグとは|EV・ハイブリッド車の高電圧を遮断する手順と作業前の確認
サービスプラグとは
駆動用電池の高電圧回路を、人の手で機械的に切り離すための部品です。
このページは、特定整備の認証を持つ工場で、ハイブリッド車や電気自動車の高電圧部に近い作業をする前の段取りを、技術と作業の順番でまとめたものです。サービスプラグの位置、抜き方、本数、待つ時間は車種ごとに違います。ここに書くのは各メーカーの資料に共通する考え方で、実際の作業はその車の整備要領書に従ってください。
サービスプラグは駆動用電池のケースの上や近くにあることが多く、トヨタのプリウス プラグインハイブリッド(2009年12月から2011年12月の生産車)では、ラゲージルーム内の駆動用電池の後部に3個あると同社のレスキュー資料に記載されています。1本抜けば済む車ばかりではないので、本数は必ず整備要領書で確かめます。
高電圧回路を遮断する仕組み
電気で切るリレーと、手で抜くサービスプラグの二段構えになっています。
ハイブリッド車の高電圧は、ふだんはパワースイッチ(POWERスイッチ)に連動するシステムメインリレーで入り切りされています。2019年の検討会報告書は、POWERスイッチをOFFにしていれば電圧回路は遮断されていると考えられる一方、OFFにし忘れたり誤ってONにしたりすると活線状態になるおそれがある、と書いています。リレーだけに頼らず、サービスプラグで回路を物理的に切っておくのはこのためです。
| 場面 | 手動の遮断 | 自動の遮断 |
|---|---|---|
| 通常使用 | なし | パワースイッチ連動 |
| 点検・整備時 | サービスプラグ | パワースイッチ連動 |
| 衝突時 | なし | 衝突検出 |
| 充電時 | 充電プラグ | パワースイッチ連動 |
表はトヨタ「レスキュー時の取り扱い プリウス プラグインハイブリッド」(2011年11月、2009年12月から2011年12月生産車の記載)にある遮断モードの表を書き直したものです。点検・整備のときだけ、手動のサービスプラグと自動のパワースイッチ連動が両方使われます。
このほか、2019年の検討会報告書には、漏電などの異常を感知するとコンピュータ制御で原則として電路がシャットダウンされること、水没などで12Vバッテリーの電源が絶たれるとシステムメインリレーがOFFになり電気回路が成立しないことが書かれています。ただし、これらは車の側の保護機能です。作業者が遮断を確かめる手順を省いてよい理由にはなりません。
サービスプラグの外し方と作業前の手順
システム停止、キーの管理、サービスプラグの取り外し、待機、検電の順に進めます。
- 車両を固定する:輪止めをしてパーキングブレーキをかけ、シフトをPにします。
- システムを停止する:メーター内のREADY表示灯を見て、点灯していればパワースイッチを押して停止し、メーターとREADY表示灯が消えたことを確かめます。エンジンが止まっていてもシステムが止まっているとは限りません。
- キーを車から離す:スマートキーは作業者が持つか、決めた保管場所に置きます。トヨタのプリウス プラグインハイブリッドのレスキュー資料は、スマートキーを車両から5メートル以上離すよう書いています。
- 補機バッテリーのマイナス端子を外す:再起動と電気火災を防ぐ処置です。サービスプラグとどちらを先にするかは車種で違うので、整備要領書の順番に合わせます。
- 絶縁用保護具を着けてサービスプラグを抜く:絶縁手袋をして抜きます。レバーを起こしてから引き抜く形のものなど、外し方は部品ごとに違います。
- 抜いたサービスプラグを携帯する:ほかの人が誤って差し戻さないよう、作業者のポケットなどに入れて持ち歩きます。
- 決められた時間を待つ:回路内のコンデンサーに電気が残っているため、整備要領書に書かれた時間をおいてから高電圧部に触れます。
- 検電で無電圧を確かめる:絶縁被覆のない高電圧端子に触れる前に、テスターで電圧が0Vであることを確かめます。
- 外した端子を絶縁する:外したコネクタや端子は絶縁テープで覆い、作業中に触れたり他の部品と接したりしないようにします。
手順1から3はトヨタのレスキュー資料、手順5から8は同社のHVバッテリー回収マニュアルの記載に沿っています。どちらも特定の車種向けの資料なので、ほかの車ではそのまま当てはめず、整備要領書で順番と方法を確かめてください。サービスプラグがどうしても外れない車について、2019年の検討会報告書の時点では、整備要領書によりレスキューに依頼することとされ、一般に整備工場では整備を行わない、と書かれていました。なお、2024年の通達は、車体の構造によってはサービスプラグの取外し以外の方法で高電圧の電路を停電させる車もある、としています。停電のさせ方そのものが車種で違う前提で、整備要領書を開いてください。
待機時間と検電による無電圧の確認
サービスプラグを抜いた直後は、まだ回路に電気が残っています。
残った電荷の扱いは、電気工事一般でも同じ考え方です。労働安全衛生規則第339条は、電路を開路して作業するとき、残留電荷による危険のおそれがあれば安全な方法で確実に放電させるよう定めています。現行の特別教育でも、学科「自動車の整備作業の方法」の「停電電路に対する措置」に残留電荷の確実な放電が含まれています(2024年6月12日 基発0612第22号)。
- 検電に使うテスターは、測る電圧に見合う定格のものを選び、使う前に既知の電源で表示が出ることを確かめておく
- 測る箇所と順番は整備要領書の指定に従う。プラスとマイナスの間だけでなく、指定があれば各端子と車体の間も測る
- 0Vにならない、数値が下がり続けるといった場合は作業を進めず、待機時間をとり直すか、整備要領書の点検手順に戻る
2024年の通達(基発0612第22号)は、特別教育の「安全作業用具に関する基礎知識」の「検電器」に、サーキットテスターと絶縁抵抗計が含まれるとしています。どちらも高電圧部の作業では手元にあるはずの道具なので、校正や電池切れの管理も作業の一部と考えておくと事故を防げます。
絶縁用保護具の着用と使用前の点検
サービスプラグを抜くときは、絶縁手袋などの絶縁用保護具を着けます。
2019年の検討会報告書は、POWERスイッチの切り忘れや誤操作で活線状態になるおそれがあるため、サービスプラグを取り外すときは絶縁用保護具が使われている、と書いています。現行の通達(2024年6月12日 基発0612第22号)は、特別教育で扱う絶縁用保護具に絶縁手袋と絶縁用靴を、その他の安全作業用具に保護眼鏡を挙げ、電路を停電させる操作に見合う耐電圧性能のものを選ぶ必要があるとしています。2019年の報告書の時点では「通電状態で作業しないので絶縁用防具の知識は要らない」と整理されていましたが、2024年10月施行の改正で、教育の範囲に絶縁用防具(絶縁シートを含む)が加わりました。
| 確認すること | 根拠・出典 |
|---|---|
| 低圧(直流750ボルト以下)の電路に使うものは、電圧に応じた絶縁効力があるものを使う | 労働安全衛生規則第348条第2項 |
| その日の使用を始める前に、ひび、割れ、破れその他の損傷の有無と乾燥状態を点検する | 労働安全衛生規則第352条 |
| 絶縁手袋は使う前にひび割れ、破れその他の損傷がないことを確かめる | トヨタ HVバッテリー回収マニュアル(GS450h・GS300h) |
| シャープペンシルやスケールなど、落ちてショートするおそれのある金属製品を身に着けない | 同上 |
労働安全衛生規則は、直流750ボルト以下を「低圧」、それを超え7,000ボルト以下を「高圧」と区分しています(第36条第4号)。低圧の充電電路を取り扱う作業で感電の危険があるときは第346条、高圧の充電電路では第341条が、絶縁用保護具の着用などを事業者に求めています。2024年10月1日施行の改正で、特別教育の対象から「低圧」の限定が外れ、直流750ボルトを超える電池を積む車の整備も対象になりました。車の世界でいう「高電圧」と、規則の「高圧」は意味が違うので、電池の電圧がどちらの区分かを整備要領書で確かめてから、当てはまる条文を見てください。
絶縁用保護具の定期自主検査を定めた第351条は、低圧用(第348条第1項第5号)について「交流で三百ボルトを超える低圧の充電電路に対して用いられるもの」に限ると書いており、直流についての記載はありません。車の駆動用電池(直流)の作業に使う保護具が対象になるかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。周期、記録、保存期間は、姉妹サイトの「絶縁用保護具の定期自主検査」で扱っています。
作業場の区画と高電圧作業中の表示
作業者本人だけでなく、周りの人が近づかない、触らない状態をつくります。
トヨタのHVバッテリー回収マニュアルは、作業時に周囲の人へ高電圧作業中であることを知らせるため、「高電圧作業中 触るな!」の標示をするよう求めています。抜いたサービスプラグを作業者が携帯するのも、他の人が差し戻す事故を防ぐ手当てです。電気工事一般では、労働安全衛生規則第339条が、開路に使った開閉器に施錠するか、通電禁止の表示をするか、監視人を置くことを定めています。車の整備でも、遮断したものを他人に戻させない、という考え方は同じです。
- 作業する車の周りをコーンやバーで区切り、作業中の表示を車の前後から見える位置に出す
- スマートキーとサービスプラグは作業者が持つ。キーボックスに戻す場合は「作業中」の札を付ける
- 作業を途中で引き継ぐときは、抜いたサービスプラグの本数、外したコネクタ、絶縁テープを貼った箇所を口頭と書面で渡す
- 高電圧ケーブル(オレンジ色)と高電圧部品(コーションラベル付き)には、作業に関係のない人が触れないよう周知する
オレンジ色のケーブルとコーションラベルは、同じマニュアルが「不用意に触らない」と注意している対象です。高電圧部の見分け方は「EV・ハイブリッド車の高電圧システムの仕組みと点検」にまとめています。区画の広さや表示の様式に決まった形はないので、工場のレイアウトに合わせて、通路と作業場所の境目をはっきりさせてください。
作業後の復帰と通電前の確認
通電は、作業者に感電の危険がないことを確かめてから戻します。
- 作業箇所を確かめる:高電圧コネクタの差し込み、ロック、締め付けトルクを整備要領書どおりに確かめ、工具や部品の置き忘れがないか見ます。
- 絶縁テープを外す:作業中に端子を保護していた絶縁テープを、接続の直前に外します。
- 周りの人を確かめる:車に触れている人、車の下に入っている人がいないことを確かめます。
- サービスプラグを戻す:絶縁手袋をして、指定の向きと手順で確実に差し込みます。
- 補機バッテリーをつなぐ:外していた場合は接続し、時計や学習値など整備要領書が求める初期設定をします。
- システムを起動して確かめる:READY表示灯が点くこと、警告灯が点いていないことを見ます。スキャンツールで故障コードを確かめ、作業で出た履歴は内容を確かめてから消去します。
労働安全衛生規則第339条第2項は、作業中や作業後に開路した電路へ通電しようとするとき、作業者に感電の危険が生じるおそれがないことを事前に確かめるよう定めています。車でいえば、サービスプラグを差し戻す前の声かけと目視が同じ役目を持ちます。
点検や整備の内容は点検整備記録簿に残します。作業が分解整備や電子制御装置整備に当たる場合は特定整備記録簿にも記載します。どの作業が当たるかは「特定整備に該当する作業一覧」、記録簿の使い分けは「特定整備記録簿と点検整備記録簿・指定整備記録簿の違い」で確かめられます。
感電したときの対応と救助の二次災害防止
助ける人が感電しないことを最初に考えます。
万一に備えて、工場の中で次の3点を決めておくと動きが早くなります。救助に使う絶縁手袋の置き場所、AEDの場所と119番に伝える住所、事故が起きた車の高電圧を誰が遮断するかです。作業者が1人のときに高電圧部の作業をしない、という決め方も一つです。
駆動用電池の電解液に触れた場合の扱いは、電池の種類と車種で違います。トヨタのプリウス プラグインハイブリッドのレスキュー資料は、リチウムイオン電池の電解液が目に入ったときは水で15分以上洗い流し、専門医の診断を受けるよう書いています。水没した車について、2019年の検討会報告書は駆動用電池は車体から絶縁されており、水没した状態で車体に触れても感電することはないとしつつ、水に浸かった電池はケース内部で通電する可能性があるとしています。事故車や水没車の駆動用電池は、変形や漏電、漏液を前提に保護具を着けて扱ってください。
サービスプラグを扱う人に必要な特別教育(2024年改正後)
サービスプラグの取扱いは、いまは学科の「停電の方法」と実技の中で教えます。
対地電圧が50ボルトを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備の業務は、2019年10月1日から独立した特別教育の対象です(労働安全衛生規則第36条第4号の2)。2024年10月1日施行の改正(令和6年厚生労働省令第95号、同告示第213号)で、学科の科目名は「電気に関する基礎知識」「電気装置に関する基礎知識」「安全作業用具に関する基礎知識」に改められ、学科「自動車の整備作業の方法」の範囲だった「サービスプラグの取扱いの方法」は「停電の方法」になりました。通達は、「停電の方法」にサービスプラグの取外し、取付け、管理と、車体の構造に応じたそれ以外の停電の操作が含まれ、実技には絶縁用保護具等の使用と停電のための操作が含まれる、としています。改正前の教育を受けた人は低圧の電池の車の作業は引き続き行えますが、直流750ボルトを超える電池の車を扱うには、追加された範囲の教育が要ります。教育の時間数、自動車整備士の科目省略、記録の保存は、姉妹サイトの「EV・HV整備の特別教育」にまとめています。
車検の受付でEV・ハイブリッド車を預かるときの確認は「電気自動車・ハイブリッド車の車検」、高電圧部品の構成は「高電圧システムの仕組みと点検」をご覧ください。
サービスプラグに関するよくある質問
サービスプラグを抜けば、すぐに高電圧部に触れてもよいですか。
すぐには触れません。回路内のコンデンサーに電荷が残っているため、整備要領書に書かれた時間を待ちます。トヨタのGS450h・GS300hでは10分以上と定められています。待ったあとも、被覆のない端子に触れる前にテスターで0Vを確かめます。
サービスプラグはどこにありますか。
車種ごとに違います。駆動用電池の近くにあることが多く、トヨタのプリウス プラグインハイブリッド(2009年12月から2011年12月の生産車)ではラゲージルームの駆動用電池の後部に3個あります。位置と本数は整備要領書で確かめてください。
パワースイッチをOFFにしていれば、サービスプラグは抜かなくてよいですか。
抜きます。パワースイッチのOFFはリレーによる遮断で、切り忘れや誤操作で活線状態になるおそれがあります。サービスプラグはそのうえで回路を機械的に切るためのもので、全ての作業に先立って抜くとするメーカー資料もあります。
抜いたサービスプラグはどこに置けばよいですか。
作業者が持ち歩きます。トヨタのHVバッテリー回収マニュアルは、他の作業者が誤って取り付けないよう、ポケットに入れるなどして携帯するよう書いています。車の上や工具台に置いたままにしないでください。
高電圧の作業記録や入庫車の管理をシステムでまとめられますか。
1台ごとの整備履歴と作業内容を残せる自動車整備システム(自動車整備ソフト)を使えば、ハイブリッド車や電気自動車の入庫を受付で見分け、高電圧部の作業をした日と担当者をあとから探せます。整備システム・整備ソフト DREAM POWER は車両販売システムの機能も持つため、車販ソフトと顧客情報を二重に管理せずに済みます。国内40社の整備システム 比較表を無料でお送りしており、整備ソフト おすすめの選び方、整備ソフト 安い導入、整備システム リースなしの契約形態についてもご相談いただけます。
出典・関連ページ
このページは次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月17日確認)。
- 厚生労働省労働基準局長通達「電気自動車の整備の業務等に係る特別教育に係る労働安全衛生規則等の改正について」(2024年6月12日 基発0612第22号、2024年10月1日施行。北海道労働局の掲載):https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/001852091.pdf
- 厚生労働省「電気自動車等の整備業務に必要な特別教育のあり方に関する検討会報告書」(2019年4月26日。2019年時点の整理):https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000489412.pdf
- 厚生労働省リーフレット「電気自動車、ハイブリッド自動車等の整備業務に係る感電災害防止のための特別教育が変わります」(2019年の制度開始時のもの):https://www.mhlw.go.jp/content/001101327.pdf
- 労働安全衛生規則 第36条・第339条・第341条・第346条・第348条・第351条・第352条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- トヨタ自動車「HVバッテリー 回収・リサイクルマニュアル(ニッケル水素電池)GS450h(GWL10系)GS300h(AWL10系)」(2014年4月、日本国内 自動車解体事業者様向け):https://global.toyota/pages/global_toyota/sustainability/esg/challenge2050/Challenge5/proper-disposal/hv_detachable_gs450h10.pdf
- トヨタ自動車「トヨタ ハイブリッド車 レスキュー時の取り扱い プリウス プラグインハイブリッド」(2011年11月、ER2210J):https://global.toyota/pages/global_toyota/your-vehicle/er2210j_prius_phv_2.pdf
※本ページは公開資料を整理したもので、特定の車種の作業手順を示すものではありません。実際の作業は、その車のメーカーの整備要領書に従ってください。
EV / ADAS
EV・ADAS整備ガイド
エーミング、高電圧整備、ADASの整備を、制度と作業の両面からまとめています。
EV・高電圧整備
- サービスプラグと高電圧作業の安全手順
- 高電圧システムの仕組みと点検
- 電気自動車・ハイブリッド車の車検







